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Treponema pallidum ~ぶどう膜炎 2020年11月公開

梅毒は、スピロヘータの一種である梅毒トレポネーマ( Treponema pallidum)が皮膚、粘膜を通じて感染することにより生じ、2期ないし3期梅毒患者の一部ではぶどう膜炎を来す。我が国にも16世紀に伝来し、以後、ペニシリン療法が確立するまで性病の王者として君臨した。母親が感染した場合には子供に先天梅毒を来す。多彩な眼炎症所見を呈するが、眼底後極部の限局性、渗出性の網脈絡膜炎は比較的特徴的な所見として知られる。また、網膜色素上皮が広範囲に障害され、検眼鏡的には脱色素や色素の沈着が、蛍光眼底造影ではwindowdefectによる顆粒状の過蛍光が認められる。単独あるいはぶどう膜炎に伴って視神経炎を発症することもある。角膜実質炎、難聴、歯牙異常はHutchinsonの三徴として知られる。抗生物質(ペニシリン)による治療への反応は良好で、耐性もないため早期に治療を開始すれば治癒に至る。梅毒自体は今日でも根絶されてはおらず、性交渉感染症(STD)として散発的にみあられる。加えて、近年ではHIVとの同時感染例が多くみられ、病像を複雑にしている。(後藤浩)


提供 後藤 浩

日本眼感染症学会

Japanese Association for Ocular Infection

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