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フザリウム ~角膜炎 2021年8月公開

 1970年代、有機農業から無機農業への転換に同期して、突き目によるFusarium solani角膜炎が急増した。これは、化学肥料の使用により、フザリウムの天敵であるPseudomonas fluorescensが土壌から減少したためと三井幸彦は推察している。臨床的にはhyphateulcerとendothelialplaqueの形成が特徴で、多くの場合に前房蓄膿を伴う。農村型角膜真菌症の代表病原体で、感染の進行は極めて早く、眼感染症研究会の主導で開発されたピマリシン点眼薬(眼軟膏)の導入以前は極めて難治であった。ピマリシンについては、眼局所の毒性が問題となる症例がしばしばみられたが、2005年のボリコナゾール登場以後は治療が格段に行いやすくなった。2004年にはシンガポールでコンタクトレンズ装用者にフザリウム角膜炎のoutbreakが生じ、米国にも波及した。問題となった多目的用剤が回収されて収束に至ったが、レンズケアが角膜感染症の大きな危険因子であることが再認識された事件であったといえる。(佐々木香る)

 

提供 宇野敏彦

日本眼感染症学会

Japanese Association for Ocular Infection

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