理事長挨拶
理事長就任のご挨拶
理事長 宮﨑 大
このたび、日本眼感染症学会理事長を拝命いたしました宮﨑 大です。
まずは、本学会の発展にご尽力くださいました歴代理事長、役員、そして会員の皆様に心より敬意と感謝を申し上げます。本学会は長年にわたり、我が国の眼感染症診療、研究、教育を牽引し、多くの知見を積み重ねてまいりました。その伝統を受け継ぎながら、新しい時代にふさわしい学会の発展に微力ながら尽力してまいります。
感染症を取り巻く環境は、この十数年で大きく変化しました。新型コロナウイルス感染症は、感染症が社会全体に与える影響を私たちに改めて認識させました。一方で世界では、薬剤耐性菌(AMR)の拡大、新興・再興感染症、真菌感染症の増加など、新たな課題が次々と生じています。眼科領域においても、耐性菌への対応、抗菌薬の適正使用、医療安全の確保は、これまで以上に重要なテーマとなっています。
眼感染症診療もまた、大きな転換期を迎えています。分子生物学的診断技術の進歩により、病原体を迅速かつ高精度に同定できる時代が始まりつつあります。また、新しい抗感染症治療薬の開発も進み、これまで経験や施設ごとの工夫に支えられてきた診療は、より客観的なエビデンスに基づく診療へと発展しようとしています。
私は、これからの日本眼感染症学会の重要な使命は、「Evidence-based Ophthalmic Infectious Diseases」を推進することにあると考えています。
ここでいうEvidenceとは、基礎研究や臨床研究はもちろん、リアルワールドデータ、分子診断、薬剤耐性情報、新規治療の長期成績、さらには医療安全事例から得られる経験まで、眼感染症診療を支えるあらゆる科学的根拠を含んでいます。私たちは、それらを収集し、検証し、共有し、次の診療へと還元していく役割を担わなければなりません。
その第一歩として、本学会では理事会承認のもと、JMDCレセプトデータベースを用いた単純ヘルペス角膜炎の診療実態に関する研究を開始いたしました。これまで十分に把握することが困難であった有病率、再発、治療実態などを全国規模のリアルワールドデータから明らかにし、その成果を診療や研究へ還元していくことを目指しています。このような取り組みは、我が国における眼感染症診療のエビデンスを充実させる新しい基盤になるものと期待しています。
一方で、近年経験したトリパンブルーに関連する真菌性眼内炎事案は、医療安全の重要性を改めて私たちに示しました。眼感染症は、一施設だけでは把握できない事象も少なくありません。専門学会には、最新の学術情報を発信するだけでなく、行政や関係学会と連携しながら、患者さんの安全を第一に考え、必要な情報を迅速かつ適切に社会へ還元することが求められています。今後、眼感染症領域においてどのような情報共有や学会活動が望ましいのかについても、会員の皆様とともに議論を深めてまいりたいと考えています。
私たちの目標は、新しい検査や治療法を導入することだけではありません。それらが本当に患者さんの視機能を守ることにつながっているのかを継続的に検証し、その成果を再び診療へ反映させることが重要です。研究によってEvidenceを創り、そのEvidenceを診療へ還元し、さらに新たなEvidenceを生み出していく。この循環こそが、これからの眼感染症診療の発展には不可欠であると考えています。
本学会は、多くの先輩方が築いてこられた伝統を大切にしながら、若い世代が活躍できる学会づくりを進め、国内外の関係学会や行政機関との連携を深めてまいります。
「Evidenceを育て、Evidenceを患者さんへ届ける。」
その理念のもと、会員の皆様とともに新しい日本眼感染症学会を築いてまいりたいと存じます。
今後とも、日本眼感染症学会へのご支援、ご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

